アレは確か1998年〜1999年頃の事。
その頃私はGrizzly−Backpacker'Storeのショップマネージャーとして多忙な日々を過ごしていた。

その日は同僚の澤田君、池田君そして数人のお客様と小樽の赤岩にFreeClimbingへ出かけた。

その頃は11時の開店前にひと登り…朝4時に小樽に出かけ、ショップのOPENまでに戻り営業という今では考えられないハードなスケジュールを週2〜3回のペースでこなしていた(ように思う)。

早朝Climbingを終え帰路に。僕は車の後部座席に座っていた。少し疲れて眠かった。ふと外の景色に目を向けると…

小樽の街中、路地のような狭い道に『線路』の跡のようなものが見えた。しかしその軌道敷は列車(汽車)のためのものしてはかなり幅が狭かった。[ナローゲージ? いや、それでも狭すぎる。だいたい今はまるで使われていないようだ。]

『アレは何だ?』誰にとも無く僕が尋ねると池田君が、『あぁ、アレは多分トロッコ用に昔に作られた線路の跡やないですか?』

トロッコ?トロッコって何だ? そういえば小学生の頃何かの授業で聞いたことがある。確か・・・そうだ!乗り物だ。車輪が付いている乗り物だったようにうっすらとだが記憶にある。だが、具体的にどんな乗り物なのかが分からない。そういえば見たことがない。一度もだ。走っているところ、いや交通記念館などでも『かつて***のために使用されていたトロッコ』などと展示されているものも見たことがない。もちろん模型やプラモデルでも、超合金でもだ。

池田君や他に同乗していた人たちに聞いても同じだった。みんな『トロッコ』そのモノを見たことがないのだ。

だが、なぜか名前だけは知っている。乗り物であると言うことも…

[不思議だ。まるでミステリーだ。] 僕は考え込んだ。

ふと! ひらめいた。一瞬にして理解した! 『そうか、そういうことだったのか!』 思わず叫んでいた。

『なんですか? いきなり大声で?』池田君が僕に聞き返す。

『池ちゃん。謎は全て解けた。トロッコの正体が分かったのだよ』

『ハ? 正体? トロッコはトロッコでっしゃろ?』

『そう確かにトロッコはトロッコでしかない。だが、しかし! 池ちゃんも僕も、そしてここにいるみんなもトロッコを見たことがない』 

『つまり。いまだかつて人類で実物のトロッコを見た人はいないと言うことだよ』

『はー? (笑) それで? 正体は何ですのん? 見た人がいーひんのなら正体も分かりゃしませんでしょ?(笑)』


『簡単なことだよ。池ちゃん。みんなが知っているのに見た人がいない。みんなが知っているのにだ。つまり、トロッコとは…』


(一同)『トロッコとは〜?』

『そう。それはまさに鵺や麒麟、河童や鬼など想像上の生き物達とと同じように… トロッコとは人の心が生み出した想像上の乗り物なのだ!』

『・・・・・・・』

『つまり昔の小樽の人たちは平安時代の貴族が怨霊を恐れたり、神仏を祀ったりをしたのと同じように、来る筈もないトロッコのために線路を敷き、いつ何時突然トロッコがやって来ても良いように準備をしていたと言うわけさ…』



時は流れ・・・

今年の夏。
長男と一緒に三笠市の博物館でトロッコを見た。そこで! 普通に展示されていた。その乗り物の横には確かに[トロッコ]と書かれた看板が立っていた。博物館の外のトタン屋根の壁のない小屋のようなものの下で… ひっそりと。あまりにひっそりと。僕が見たものはかつて想像していたものとあまり変わりは無かったように思う。

かつて栄華を極めていた頃の小樽の人々がその来訪を待ち望んでいたという伝説のトロッコが、そこにあった… 

だが、今になって思う。[アレは本当にトロッコだったのか?]幻? なんかキマッてた? いや、そうではない。確かに僕は見たし、係員の目を盗んで勝手に座ってもみた。

だが、しかし。何か引っ掛かる…

果たしてあの博物館にあったトロッコは本当にトロッコそのものだったのか?

東スポに河童の写真が出ていたこともある。あれは本物だったか?
不思議系雑誌などで見かける鬼のミイラや人魚のミイラ等々…
それらは本当に本物だろうか?

トロッコが本当に実在したのか?それともやはり想像上の乗り物なのか? いまだに僕は分からないまま。謎は…深まるばかりだ。


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